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2008-09-14

広島東雲本町 お好み焼き 三八


広島風お好み焼きの焼き方は、麺の扱い方によって大きく分けると二種類ある。

みっちゃん八昌など名の通ったお好み焼屋のほとんどが採用しているのが、茹でた麺を鉄板で焼き、最後に本体と合体させるやり方。

それに対して地域の小さな店の多くが採用しているのは、生麺をつかわず、蒸し麺をはじめに軽く炒め、ソースで味をつけて、それを丸くしいた生地の上にまず載せてしまうやり方。
生地にのせた麺の上に、さらにキャベツや天かす、豚肉などを積み上げていく。
ひっくり返してしばらく火を通したら、アイロンのような丸い重しで上からぐいぐい押しつけ、キャベツの水分を搾りだすのである。

このやり方だと麺を茹でなくて良いので、女性が一人でまわしている小さな店などでは調理がしやすいということがあるだろう。
また広島風お好み焼きを「もともとのお好み焼きと、焼きそばの合体したもの」と捉えると、焼き方としてはこちらが初めで、その後ゆでた麺につよく焼きを入れてパリッとした食感を楽しませるというやり方が、新たに編み出されていったと考えられるだろう。

この初めの焼き方を「三八系」と呼んでいる人もいて()、この「三八」という店が、広島風お好み焼きのオールドスタイルな焼き方を代表するらしい。
ということでこれは行って見ずばなるまいと、ちゃりんこに乗って片道30分、出かけてきたのだった。


休日のお昼時ということで、けっこうな人が並んでいた。
有名店の行列はよく観光客によって作られるが、ここは全員、地元の人。
それだけでまず凄さが分かる。
店で食べるばかりでなく、同じくらいの量の持ち帰りがある。

入り口をはいるとでっかい鉄板があり、おばちゃんが三人で何十枚というお好み焼きを焼いている。
よく有名店で男性の職人が何人かで焼いているのは見かけるが、おばちゃんが三人で、しかも四角い鉄板を三方から囲んで焼いているというのは初めてみる光景で、韓国の飲食店をほうふつとさせる、なかなかの活気と迫力なのである。

鉄板がこんな状態なので、鉄板で食べるなんてことは出来ないのかと思ったが、聞いてみるといいですよと快諾、隅のほうに場所を空けてくれた。
しかしよくほかの店がやるように鉄板から焼け焦げをきれいにこそげ取るということもなく、ちょこちょこっと布巾でふいてくれる程度、あたかも調理場のすみで賄いを食べるという格好になったのだが、それはそれで悪くない。

目の前の鉄板で、大量のそばが炒められ、天かすとソースで味付けされる。
この天かすは、イカ天の天かすのようで、食べた時にイカ天の味がした。
その焼きそばを一人前分、丸くのばされ、けっこうな量の魚粉が振りかけられた生地の上にのせ、大量の細切りキャベツ、天かす、もやし、そして豚ばら肉が、普通は3枚のところ何とここでは5枚、それらをこんもり載せたところでひっくり返す。

しばらく蒸して、そしてアイロンでギュウ押し。
かなり強く、ぺちゃんこになるまで何度も押しつける。
これはキャベツの水分を取り、ほっくりさせる効果と、同時に上にある麺の味をキャベツに染みこませ、キャベツと麺とを一体化する効果があるそうだ。

ギュウ押しが終わると鉄板に卵を割り、コテでのばす。
卵は二つ玉。
上に本体をのせて、しばらくしてひっくり返し、ソースはミツワソース、青のりと白ゴマ、ガーリックパウダーで出来上がり。



シングル600円。
ほかにそば倍量のダブルや、半量のレディースがある。
青ねぎはサービスでトッピングしてくれる。
シングルだがすごいボリュームで、肉も5枚、卵も二つ玉で青ねぎ付きというのに、今どき600円はかなり安い。
やはり行列店の第一条件は、この強烈な割安感だろう。

食べてみると、ふんわりとして柔らかい。
なるほどこの柔らかさが、オールドスタイルな焼き方の身上なのだろう。
肉と魚粉、天かすでうまみもしっかり出ていて、ガーリックが良いアクセントになっている。
気取らない、素朴な感じで、ああ、広島風お好み焼きとはもともとこういうものだったのだな、と思う。
隅々まで神経を行き届かせて焼くお好み焼きはもちろんおいしいけれど、こういう店が、広島のお好み焼きの広い裾野を形づくっているのだろう。
ごちそうさまでした!

三八 (さんぱち) (お好み焼き / 段原一丁目、天神川)
★★★☆☆ 3.0

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