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2009-07-09

南区西翠町 「来頼亭」

宇品の電車通り沿いにあるこの店、創業昭和23年、もう60年以上になるとのことで、老舗中の老舗、「すずめ」や「陽気」よりも、もっと古いんだな、最近まで存在を知らなかったのだが、広島最古のラーメン屋となれば、行ってみずばなるまい、たまたま今日はこちらの方面で仕事だったので、ちょっと足を伸ばしてみたわけなのだ。

11時40分頃の到着だったが、店内はすでにほぼ満席、地元のおじちゃんとかおばちゃんとか、そういう感じの人達だな、僕は並ばずにすぐ座れはしたが、12時近くなるとサラリーマンが流れ込み始めて、行列を作り始めていた。地元の人とか、この店のラーメンを何十年も食べ続けている人とか、いたりするんだろうな。

食券を買って席に座る。メニューは中華そばの大と小、チャーシュー麺もあったかな、親子三代で店をやってるみたいで、おばあさんは注文を聞き、ラーメンを運び、お父さんとお母さんはラーメンを作り、さらに年頃のきれいに化粧した娘さん二人が、厨房の中と外を手伝っていた。

中華そば小、550円。錦糸玉子が乗っている、珍しいな。

うーん、このラーメン、まさに広島、という感じ。まあもちろん広島と言っても色々あるわけだが、すずめや陽気、それに食堂なんかの味がそうだと思うのは、「しみじみとうまい」、突出したものが全くなく、完全になだらかなのだが、かといってそれは平板だったり、ぼんやりしている、ということではなく、足りないものも全くない、という感じ、僕はこれが、広島の料理の、一つの大きな特徴なんじゃないかと思うんだよな。またそれとは対極に、広島つけ麺とか、お好み焼きもそうだと思うが、超刺激的な味の食べ物も多かったりするのだが。

そういう意味でこの店、すずめや陽気とも、精神としては共通するのだが、ラーメン作りの考え方としてはこれが、かなり違う。まず思うにこのラーメン、化学調味料を使ってないんじゃないかな。まあ全く使っていないかどうかはわからないが、少なくともあまり使っていない。陽気なんかは化学調味料を、「ザーッ」と音がするかと思うくらい入れていて、いや、いい悪いという意味ではなく、化学調味料を全体の味のまとめ役、または一つのアクセント、として使っていると思うのだが、僕は古いラーメン屋はみんなそうかと思っていたが、ここのスープは全く違う、豚骨だしをていねいに取った、そのままの味、無化調のラーメン屋、ここにはアップしていなかったのだが、「面館」とかと同じ感じの、ひっかかりはないがまろやかな豚骨だしの味、そのままを、前面に出している。それに合わせてある醤油がまた控えめで、だからある意味、まったく刺激のないスープなのだな。

そして麺がまた、広島でよくある、「ワシッ」とした感じでは全くなく、元々コシが弱く、どちらかと言えばもちっとした麺を、さらにやわらかくゆでてくる。チャーシューも大判のものが5枚、入ってくるのだが、薄味でやわらかく煮られたモモ肉が極薄にカットされていて、これも口の中でとろけるか、という感じ、もやしもシャキシャキではなく、やわらかくゆでられていて、それに錦糸玉子だから、とにかく全体として徹底的にまろやか、なだらか、それが流動食でも食べるように、口から胃に流れ込んでいく、という感じなんだな。

しかしそれは、のびたラーメンが勢いがない、などという意味とは全く違って、スープは濃厚なコクがあり、麺はもっちりして、チャーシューも味があって、陽気を直球系の投手とすれば、こちらはアンダースローの、変化球を多用する投手という感じか、まあ僕は野球のことは詳しくないのだが、とにかくこれはこれで、過不足なく、一つの世界を形作っている、食べ終わって、ああおいしかった、と思うのである。

たぶん色んなところの微妙なバランスの中に成立しているのだと思う、この味、一種の芸術品のようなものだよな。いや広島はほんと、ラーメンが凄い場所だよな。

来頼亭 (ラーメン / 県病院前、広大附属学校前、宇品二丁目)
★★★★★ 5.0