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2011-10-03

醤油で煮込むモノクロな味。鶏ももとナスの煮込み


鶏もも肉とナスが冷蔵庫に入っていたから、これで味噌炒めを作ろうと思っていたのだが、どうもピンと来ない。それでいろいろ考えた結果、味噌で炒めるのではなく、醤油で煮込むことにした。

味噌が嫌いというわけではないが、醤油はほんとに面白い。

まずどんなものにでも合ってしまう。醤油が合わない材料って、世の中にあるのかと思うくらいだ。毎晩の肴が醤油味ばかりになってしまうことがよくあるが、まったく不満は感じない。料理に使ってよし、ただかけてよし、こんなに便利な調味料は、そうそうはないだろう。

また醤油は、他の調味料との相性が抜群にいい。酒、みりん、砂糖とは、まさに黄金の取り合わせだし、酢もよし、唐辛子やゴマ、ニンニク、生姜ともよし。組み合わせを様々に変えることで、味が七変化する。

さらにみりんや砂糖などの甘みと、醤油との取り合わせがまたすごい。

みりんや砂糖などの「甘み」と、醤油の「塩分」を、日本の料理では両方加えるわけだけれど、これは他の国でもすることなのか。韓国は、日本とまったく同じような感覚で、砂糖を使うのだよな。中国はどうなのか。同じ料理に甘味と塩分を両方使うことは、あまり一般的じゃないのじゃないかと思うのだがな。インドや西洋ではどうだろう。お菓子やケーキなどの形で、甘い料理というものが、塩辛い料理とは別に並ぶことになるのじゃないか。

まあ他の国に、あろうがなかろうが、どちらでもよいのだが、いずれにせよ甘みと塩分は、たがいに相殺し会う関係となっている。塩分が多くても、その分甘みを増やせば、人間の感覚にとって塩辛くはなくなるわけだ。「塩辛さ」はあくまで、甘みと塩分のそれぞれの量の、相対的な比率により決まってくる。

だから塩辛さを同じにしながら、みりんや砂糖と醤油を、ちょっとずつ使うところから、どちらも大量に使うところまでが可能となるわけだ。これが「薄味」と「こってり」の違いだ。この薄味からこってりまでのバリエーションの中に、様々な材料が収まっていく。野菜は薄味で炊いて、肉や魚はこってり炊くとか、酒の肴には薄味にして、ご飯のおかずにはこってりさせる、などということになっていく。

そしてここに、「煮込む」という料理法が加わってくることにより、醤油の威力をより一層発揮させることになる。

「煮込む」は最近では「カレーを煮込む」などのように、「コトコトと煮ること」を意味するようにもなっているが、元々は「煮詰める」ことだ。煮しめのように、煮詰めて汁を飛ばしてしまうことにより、それまで煮汁にあった調味料の成分を、すべて材料に渡してしまうことを意味している。長い時間煮ると荷崩れてしまう野菜や魚に、短時間で強制的に味を付けてしまうことができるやり方だ。

みりんや砂糖と醤油の配合の割合を変えることと、「煮込み加減」とを変えることにより、日本の料理は同じ「醤油味」でも、材料や料理の種類に合わせた、様々な味の陰影を生み出すことができる。例えてみれば、黒い色の墨一つで、ありとあらゆる自然を表現する水墨画のようなものだろう。醤油味の世界には、非常に奥深いものがあると思うんだな。



というわけで、ナスは醤油味で煮込むことにして、まずナスの下ごしらえ。


ナスは水でさっと茹でる。

これはニシンとナスの煮付けの作り方を聞いた時、魚屋のおばちゃんが教えてくれたやり方なのだが、ナスの下ごしらえとして、水にさらしたり素揚げしたりすることはあっても、下茹でするというのは珍しいのじゃないか。

魚屋のおばちゃんに、どうして下茹でするのか聞いたら、

「だって固いじゃない」

との答えだったが、ナスなど5~6分も煮ればやわらかくなるものだ。ナスのアクを抜くことが一つの理由とは思うが、おそらくこれは、京都の人が、それだけ野菜をていねいに扱うことを意味しているのだと思うのだよな。生のままの野菜を料理に使うのは、抵抗があるということなのだろう。

下茹でしたナスはザルに上げておき、今度は鶏肉を炒める。


鶏肉には軽く塩をもみ込んでおく。


鶏に焦げ目がついたら、コップ半分ほどの水を入れ、ナスをもどす。これはだし汁を入れれば、もっとうまくはなるところだが、鶏肉という立派なだしの素があるのだから、別に水で十分なのだ。

これにたっぷりの酒を入れる。酒は出汁がわりだ。そしてみりんと砂糖、それに醤油で、薄味だろうがこってりだろうが、好きな味を付ける。


あとは落し蓋をして、煮汁がほとんどなくなるまで、強火で煮詰めれば出来上がり。ナスは煮過ぎると荷崩れてしまうから、5分程度で煮詰めてしまうようにする。




これはいわゆる、古い大衆食堂が出すような、素朴な味ですわ。ゴマだの唐辛子だのニンニクだのを加えれば、現代的な、もっとカラフルな味になるけれど、こういうモノクロの味もしみじみとしていい。酒にもよく合います。


一昨日のアラ大根は、冷蔵庫に入れておくと煮凝りになっている。翌日煮凝りを楽しむのも、アラ大根の醍醐味の一つだ。


ちなみにナスは、三条会商店街の八百屋で買うのだが、6本入った大袋が、少し傷があるとはいえ100円。スーパーでは今、3本300円しているから、6分の1の値段だ。

この八百屋は、毎朝、京都中央市場へ行ってから、さらに地元の農家を回るのだそうだ。農家から直接仕入れる野菜は、種類は限定されるが、市場のより圧倒的に安い。


このエライ八百屋は、堀川通から三条会商店街へ入ったすぐところにある、堀川通から数えて2軒目の八百屋で、「玉辯食品店」というところです。




昼飯は、チンジャオロースー焼きそばにビール。塩焼きそばにビールは、ほんとたまらんす。

味付けは酒に醤油、ニンニクとショウガ、それに塩コショウ。