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2011-10-06

日本人の魂をくすぐられるうまさ。さわら漬け焼き



若い時分はとにかく脂っこいものが好きで、ラーメンすら物足りなかった。何をおいても肉が良く、しかもできるだけ脂身の多いものばかりを選ぶ。豚のロースなどは最高で、とんかつはしょっちゅう食べていた。

まあそれで、取り立てて太りもしなかったから、活動量も多かったのかもしれないが、最近は魚が良くなっている。

年のせいも大きいと思うけれども、日本人は元々、肉などあまり食わなかったわけで、欧米の影響がなければ、今だってとんかつなど食わずに済んでいたに違いない。

何でも自分の欲望の赴くままに生きることを善しとする考え方は、もうはっきりと限界に来ているのであり、やはりこれからは、我慢することを楽しめるようにならないと、生活するのが難しくなるだろう。

といって別に、人に我慢を強いるつもりはないけれど、あまりガツガツしているのはみっともないと思わないこともない。



あまり興味が湧かなかった魚の中でも、「漬け焼き」はこれまで、最も興味のない分野だった。魚も塩焼きならともかく、漬けてしまうと、脂っこさが半減してしまう。

それに加えて「ただ漬けておく」という料理法に、意義を感じられなかったこともある。料理というと、中華鍋をガチャガチャいわせたり、包丁で何やら切ったり、とにかく派手にやらかすことであると思い込んでいた所があり、何かを漬けて、あとはただ待つばかりというのが、料理とは思えなかったのだ。

しかし「手を触れないで待つ」ことは、「自然にまかせる」こととも言える。どんなに手を加えても、できないことはできない。草木は時が経たなければ、育つことはない。子供に手をかけ過ぎると、かえってダメにしてしまうこともあるだろう。

「漬ける」というのは日本の伝統的な調理法の一つだろう。それにもう少し学ぶことがあってもいいと、この年になりようやく思えるようになった、今日この頃なのである。




昨日は魚屋へ行ったら、「今日はさわらがおいしいよ」というので、これを漬け焼きにしてみることにした。


なに簡単なことで、酒とみりん、砂糖に醤油のタレを味を見ながら作り、これに30分ほど漬けておけばいいだけの話だ。あとで調べたら、これに柑橘の汁を絞れば、「幽庵焼き」になることを知った。しかしこれはただの漬け焼き。


汁気を拭い、焼き網でじっくり焼く。何とも素朴な料理法だ。




それに加えてナスのお浸し。ナスのお浸しのことはこれまで何度も書いているのだけれど、簡単にできるのに非常にうまい。

ヘタだけ切り落としたナスを水で10分ほどゆで、柔らかくなったら湯を捨てそのまま冷ます。あとはよく絞って好きな大きさに切り、好きなものをかけたり和えたりして食べる。

昨日はおかかに醤油だったが、ナスそのもののうまみをシンプルに味わうことができる。




あとは冷奴と、作りおきしてあった大根の葉とお揚げの炊いたんで、冷や酒を2合。

あっさりとしながらも脂ののったさわらと、甘辛い醤油味の取り合わせは、自分の中にささやかに残っている日本人の魂を、くすぐられるような気がしてたまらない。しばし昔の時代に遊び、時を忘れた。