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2012-01-10

あまりに簡単、しかもうまい。
「常夜鍋」


鍋は手軽にでき、しかもどんな材料を使っても、それなりにおいしくできるから、冷蔵庫の残り物整理などにも、うってつけなわけだけれど、「定番鍋」といわれるようなものもいくつかあり、この「常夜鍋(じょうやなべ)」は、そのひとつ。

豚肉とほうれん草を水と酒で煮て、醤油かポン酢で食べるというのが、常夜鍋の基本的な定義なのだけれど、常夜鍋の起源については、「旧制高校の寮生が始めた」とか、「刺身を食べない西洋人が、魚を熱湯にひたして食べ始めたのが、肉にも広まった」とか、ネットを見る限りにおいて、あまりはっきりしないらしい。

「常夜鍋」の名前の由来も、「毎日食べ続けても飽きない」ことから付けられたといわれている。



ところが今本屋の料理コーナーに並べられている、魯山人についての本を、パラパラと立ち読みしていたら、そこには違った説が書いてあった。

名前も「宵夜鍋」で、これを魯山人は、「じょうやなべ」と読ませている。元々中国から伝わった料理で、宵から食べ始めても、おいしくて夜中まで食べ続けてしまうから、そのように呼ばれるようになったとのこと。

ネット上で、魯山人の説について言っている記事は見当たらなかったから、いつの間にか、忘れ去られてしまったということなのでしょう。

「宵夜鍋」の名前を使っているものもありましたが、魯山人とは異なり、「よいやなべ」と読ませるものが、多いみたいでした。



なんとなく、魯山人の言うことが正解で、後世の人が「宵」を「常」と、誤読したのじゃないかという気もしますよね。

しかしいずれにせよ、こうして常夜鍋の起源がはっきりしないということが、常夜鍋の性質を、如実に物語っているといえるでしょう。

常夜鍋は、あまりに簡単すぎて、料理屋などで出されることは、まずない。

料理屋などで出されるような、メジャーな料理であれば、その起源をきちんと調べようという人も、いずれ出てくるのでしょうけれど、常夜鍋はそのようなものではなく、あくまで家庭料理として、あまり世間の話題にもなることなく、綿々と受け継がれてきたものなのでしょう。

だからこれまで、あまり研究の対象にもならなかったのだろうという気がします。



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しかし実際のところ、常夜鍋は、あまりに簡単にできるのに、実にうまい。

池波正太郎も、常夜鍋について書いているし、向田邦子も、常夜鍋が好物だったと言われています。

手軽でうまく、しかも材料費も安いというのだから、常夜鍋は、「The 鍋」と呼んでもいいようなものだと言えるのではないでしょうか。



常夜鍋を煮る汁は、魯山人などは「水と酒を半々に入れる」などと書いていたりもするわけですが、無難なのは、昆布を敷いた鍋に水を張り、酒を、半分とまでは言わないけれど、たっぷり入れる。

酒は料理酒などの、塩分の入ったものでは、下手に塩気がついてしまうから、やはり塩分の入っていない、ふつうの日本酒を使うのがいいですよね。

魯山人は、「酒は上等のものであることが重要で、まずい酒を入れるくらいなら、酒など入れないほうがいい」と書いていますが、まあそこまで言わなくても、安い酒でも、入れればうまいと思います。



材料は、「豚肉とほうれん草だけ」というのが基本です。

これは何故かというに、ほうれん草が、非常に人見知りだからなのじゃないかと思うんですよね。

ほうれん草といっしょに入れて、おいしいものが、とても少ない。

だいたい、白菜などの葉っぱ系は、ほとんどがほうれん草と合わないと思うし、ネギや玉ネギもイマイチ。

大根、ニンジンなども、やはりダメじゃないかと思うんですよね。

豆腐も、やはりイマイチなんじゃないかという気がします。

しかしほうれん草と豚肉だけだと、食事としてどうしても寂しい感じがしてしまうから、何が合うかと考えたのが、このしめじと油揚げ。

この2つは、常夜鍋に入れるのに、他の選択肢はないとすら、言えるのじゃないかと思うところなんですが、もし他に合うのを知っていたら、ぜひ教えてください。



豚肉は、好みの肉を、何でも入れればOKです。

脂身が好きならバラ肉を、脂身が嫌いならロースを入れたらいい。

今回入れたのは、肉屋で買ったコマ肉。

コマ肉も、店によってずいぶん味のちがいがあるから、まずいのを入れてしまうと、固くて食べられたものじゃないですが、おいしいのを入れれば、それで十分です。

うちの近所の肉屋は、100グラム110円と、どこより安くコマ肉を売っていますが、日本産で、どこのスーパーよりおいしいです。



ほうれん草は、魯山人をはじめ多くのレシピが、生のまま入れることとしてるんですが、僕はそれには賛成できないんです。

ほうれん草は、生のものを入れて煮ると、大量のアクが出てきてしまうことになる。

そうすると煮汁が変な味がしてくるようになり、煮るのもまずいし、さらには煮汁を飲むなどということが、まったくあり得ないことになってしまう。

サッと下ゆでし、よく絞ったものを使うのが正解だと、僕は思います。



あくまで1回に食べる分だけを、少しずつ入れ、煮えたらすぐ食べるようにする。

ほうれん草はもう下ゆでしてあるから、最後に入れて、温めるくらいでかまいません。



タレは、魯山人の指定は醤油、定番はポン酢、僕は昨日は、ポン酢に大根おろしと青ネギを入れ、一味唐辛子をふりました。

こういう水炊き鍋は、タレを自分でいろいろ調整してみることも、楽しみのひとつですよね。



食べ終わった汁は、ただそのまま、タレに入れて、すするもよし。

塩コショウに醤油で味をつけ、うどんや雑炊にするのもよし。

さらにすりおろしたニンニクとショウガを入れ、中華風にすれば、ラーメンのスープとしても悪くありません。