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2012-01-16

さっと煮て熱々を食べる。
「カキの水炊き」


晩飯のメニューを決めるのに、いちばん好きなやり方は、家では何を食べるか、まったく考えずに店へ行き、売っているものを見て、食べたいと思うものを選び、それから、それをどうやって料理するかを決めることなんですよね。

これって、どうなんでしょう。やはりちょっと、文明に汚染されているんでしょうかね。

こういうやり方だと、たしかにスーパーへ行かないと、食べたいものが、うまく決められないことになってしまうんです。

商店だと、魚屋なら魚屋へ行くためには、あらかじめ「魚を食べる」と、決めていないといけないことになりますよね。

その点スーパーだったら、魚から肉から、すべてを一同に揃えてあるから、ひと通り店内をまわり、全部を見て、その上で、何を食べるかを決めることができる。



ああ、でもそれは、書いていて気付いたんですが、単に魚屋へ行っても、あまり魚が食べたくないと思えば、魚を買わずに店を出ればいいということなんでしょうか。

魚屋へ行くと、何か魚を買わずには、どうも店が出られないというのは、文明に毒されているんじゃなく、ただ性格が弱いだけかもしれないですね。



まあそれはともかくとして、いずれにせよ、昨日はそうやって、スーパーの店内をうろつきながら、「カキが食べたい」という結論に達しました。

カキの食べ方として、やはり広島の人は、「酢ガキ」という、生ガキにポン酢をかけて食べるやり方や、あとは「カキ焼き」という、カキを殻のまま焼いて、そこにレモンでも絞って食べるやり方が、特別なものとしてあるんじゃないかという感じがします。

でもこちらは、もう寒くて鍋しか食べないと決めてかかっているわけですから、カキも鍋にすることになる。

カキは味噌味とか、韓国風のピリ辛味とかの鍋に入れても、大変おいしいわけですが、あとはまったく反対に、あっさりと水炊きにするのも、またおいしいものですよね。

スーパーの店内で、10分ほど、どちらにしようかひとしきり迷って、それで、水炊きにすることにしたという次第です。

いやどうでもいいですよね、こんなこと。



カキは、「大根おろしで洗う」というのが、レシピに書いてありますが、広島魚市場の魚卸商、「吉文」さんのブログによると、「片栗粉で洗う」といいのだとか。

大根おろしより、片栗粉の方が、大根を下ろす手間がかかりませんから、手軽です。

よく揉み洗いして、水洗いします。



カキと一緒に何を入れるかが、もちろん大問題となるわけですが、もうこれは、あまりにも定番、豆腐と、長ネギと、しめじ。

考えぬいた末に、結局毎回おなじものになってしまうんですから、マンネリもここまで来ると、手に負えません。

豆腐は、いつも木綿を使いますが、京都の木綿豆腐は、「ソフト木綿」と呼ばれる、ちょっとやわらかいタイプのもので、これがまた、湯豆腐とか、水炊きとかの、あっさりした鍋に入れるには、最高なんです。

ソフト木綿は、湯豆腐に入れるための豆腐として、戦後になってから開発されたという話もあります。



昆布でだしを取り、酒をたっぷりと入れた水で煮るわけですが、カキは煮過ぎると硬くなるから、くれぐれも火を通し過ぎないことが大事であるのは、いうまでもありません。

生でも食べられるものですから、「煮る」というより、「殺菌する」という程度に、芯まで熱が通れば、もう食べられると思って、すぐに引き上げてしまわないといけません。

それから豆腐も、特にソフト木綿の場合には、外側は熱くなっているけど、中はまだ冷たい、という加減のものが、またうまいんですよね。

ですからこれも、煮過ぎないよう、すぐに引き上げる。

だから煮るときには、1回に食べる分だけ煮て、煮えたらすぐに食べるようにする。

上の写真では、写真を撮る手前もあるので、カキも豆腐も2個ずつ鍋に入っていますが、それ以降は、1個ずつ、入れるようにしています。



鍋は弱めの火で、小さくふつふつ沸くようにしておくのが、風情があって僕は好きです。

火を大きくしてしまうと、結局あとで、また火を小さくしなければならなくなり、いちいち火を調整するのが面倒だし、「すぐに食べろ」と脅迫されているような気にもなる。

小さく沸かして、材料も、あまり湯の温度を下げないよう、ちょっとずつ入れて、ちまちまと食べるというのが、こういうひとり鍋の楽しみだと言えるのじゃないでしょうか。



タレはポン酢に、大根おろしと一味唐辛子。

これも写真を撮る手前、器にひと通りのものを揃えて入れてみましたが、ほんとはこんなことはしません。

例えばカキならカキを、鍋から箸でつまみ出したら、そのままタレをちょいと付けて、口へ運んでしまう。

あくまで一個ずつ。

器に入れて、置いておくだけで、冷めてしまうわけですもんね。

鍋はやはり、とにかく熱々のものを食べるというのが、命だと言えるんじゃないでしょうか。



具を食べ終わったら、最後はカキのだしがたっぷりと出た煮汁を、タレの器に入れて味わう。

ほんとは別途、塩と醤油で、吸い物にした方がうまいんですが、面倒ならこれでも、十分楽しめるという次第です。



こういう水炊きみたいな、「さっと煮る」という食べ方って、外国にはあるんでしょうかね。

韓国とかにはないですよね、たぶん。中国とかにもなさそう。

肉にしても、「しゃぶしゃぶ」がそうなわけですが、さっと煮て、まだ赤みが残るうちに食べてしまう。

魚介の場合なら、「生で食べる」というのは、まあ沿岸地域であれば、わりとどこでもするんじゃないかと思うんですが、そうでなければ、今度は「煮込む」という形で、思い切り火を通して、例えば中国とかなら、カキは「オイスターソース」にしてしまうわけですよね。

「生」と「煮込み」という二者択一じゃなく、生でもない、煮込みでもない、どちらでもない曖昧なあたりに、おいしさを見つけるのって、いかにも日本人らしいという気がするんですけどね。

酒も、温かくして飲むところは、日本以外にあるんでしょうか。

あまり聞いたこと、ないですよね。

ワインもお燗をつけると、すごくおいしいんですが、それも外国では、聞いたことないですよね。

しかも「人肌のぬる燗」などという、なんとも中途半端な温度が「いい」と思うのって、日本人くらいしかいないのじゃないかという気がしますよね。