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2012-02-18

ちょっとした冒険をするなら魚屋がおすすめ。
「ハタハタ鍋」


魚は肉などとくらべて、どうしても安定供給がむずかしいところがあるのだろう。

養殖している鯛やブリ、それに塩鮭や塩サバなどは別としても、その他のものは、季節はもちろんだけれど、日によっても、市場に出ているものと、出ていないものがあるにちがいない。

また市場に出ているものでも、やはり日によって、モノがいいときと、悪いときとがあったりもするだろう。



大手のスーパーなどでは、それでもできる限り、毎日決まったものを揃えようとしているように見受けられる。

それはもちろん、商売としては、その方がいいに決まっている。

買い物をする人は、多くの場合、その日に何を食べるか、まず家で考えるだろう。

考える際、前日などに店に並んでいたものを頭に思い浮かべ、今日も店へ行けば、おなじものがあるだろうと信じることになる。

思い浮かべていたものが、いざ店へ行ってみてなかったとしたら、一から献立を考え直さないといけないこともあるだろう。



しかし商店街の、それほど大きくもない魚屋では、そういうわけにはいかない。

スーパーなどにくらべたら、販売数も少ないだろうから、どうしても、その日にいいものを、厳選して仕入れることになる。

日によって、置いてあるものにムラがでてしまう。



だから買い物に出る時点で、「今日は肉を食べたい」と思ったときに魚屋へ行かないのは当然として、食べたい魚がはっきりしているときにも、魚屋へは行きづらい。

魚屋は対面販売だから、お店の人と仲良くなってしまう。

そうすると、魚屋まで行って、思っていた魚がなかったときでも、何も買わずに店を出るのは、なんだか申し訳ないような気がするものだ。

それで結局、思っていたのとはちがう魚を買ってしまい、食べたかった魚は食べられないということになってしまう。



でも自分のなかで、まだ食べたいものがはっきりしていないときには、魚屋はおすすめだ。

魚屋には、だいたいいつも、自分たちが売りたいものがあるから、行けばそれを勧めてくれることになる。



たとえばそれは、「ハタハタ」だったりする。

ハタハタは冬になると、京都のスーパーでも見かけるようになるけれど、毎日置いてあるわけでもない。

ハタハタといえば「しょっつる鍋」だけれど、それがすぐに思い出せないときだってあるだろう。

どうやって食べたらいいかわからない魚が、ただスーパーの棚に、たまに並べられていたとしても、なかなか手は伸びないものだ。



しかし魚屋なら、どうやって食べたらいいかわからなければ、きけば親切に教えてくれる。

とくべつ食べたいものがはっきりしていないとき、新しい冒険をするには、魚屋はうってつけというわけだ。



というわけで、昨日は魚屋でハタハタを買い、ハタハタ鍋にすることにした。

ハタハタは秋田県の名物だが、北海道から山陰まで、日本海側ではひと通り獲れる。

むかしは秋田では、ハタハタが大量に獲れて、あまりに安かったため、一般家庭でも箱で買うのがふつうだったそうだ。

しかし1980年代に急激に漁獲量が減り、3年にわたって禁漁とし、稚魚を放流したりしているうちに、また現在では、漁獲量は回復してきたという。

京都へは、ハタハタはたぶん、福井あたりから入ってくるのだろう。

昨日も10尾で250円だったから、イワシより安いくらいだ。



ハタハタを魚醤にしたものが「しょっつる」で、ハタハタの「しょっつる鍋」は、秋田の大名物となっている。

ただしょっつるは、京都のスーパーなどでは見かけないから、ここはふつうに、しょうゆ味の鍋にすることにする。



ハタハタを鍋にするには、内蔵を抜かないといけない。

魚屋に聞いたら、「頭を落とせば内蔵もいっしょに抜ける」とのことだったが、家に帰って調べてみると、ハタハタは「つぼ抜き」という独特の方法で、内蔵を抜くのだという。

割り箸を口から突っ込んで、エラを両側からはさみ、グリっと2回転か3回転ほど回すと、エラがはずれ、そのまま引っ張り出すと、内臓もいっしょについてくる。

試しにやってみたら、それほど難しいこともなく、内蔵をとり出すことができた。



ただハタハタは、煮ると頭がすぐに取れてしまう。

わざわざ面倒くさい思いをして頭を残すのは、あくまで鍋に入れる前から、煮ている最中の、見た目の問題だけだ。

頭を残したきれいな姿のまま鍋に入れるのが、ハタハタへの敬意ということなのだろう。



あとは水でよく洗えば、ハタハタの下ごしらえは完了。

塩をふったりも、一切しなくていい。



昆布と削りぶしで、2番だしをとる。

まず昆布を水に入れ、中火にかけて、水が沸騰したら、削りぶしをひとつかみ入れ、弱火に落とす。

アクを取りながら3分ほど煮て、ペーパータオルをザルにしいたもので漉す。

味付けは、酒半カップほどと、うすくち醤油。

甘みはつけなかったが、ハタハタはあっさりした味だから、野菜の甘みもあるし、ちょうどよかった。



白菜や豆腐、長ねぎ、エノキなど好きな野菜を、ハタハタといっしょに煮る。

ハタハタはすぐに火が通るから、煮過ぎないよう気をつける。



淡白だけれど、わりと脂が乗っていて、ちょっとニシンにも似た味。

頭は食べられないけれど、骨は食べられる。

味はよく、カルシウムもとれ、おまけに安いというのだから、まさに庶民の味方なのだ。



淡白だから、だしはそれほど出ないが、品のよい風味がある。