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2012-03-11

やってみれば難しいことは全然ない。
「サバの生姜煮」


魚の煮付けができるようになったときは、目の前がパーッと開けたような気がしたものだ。

それまで煮付けというと、どうも理解できない、近寄りがたいもののように思え、あまりやろうとも思わなかった。

少ない煮汁で煮ることや、落としブタをすること、強い火で煮汁を煮詰めることなどなど、ふだん自分がやっている料理とは、まるで別世界のように思えていたからだ。



しかしこれは、いま思えば、カレーやらシチューやらの西洋流の、肉をつかった煮込み料理に慣れすぎて、時間をかけてコトコト煮ることだけが煮込み料理だと思い込んでいたのだった。

たしかに肉がやわらかくなるには、何時間という時間が必要だから、弱火で煮続ける必要がある。

ところが魚の場合は、ものの10分もあれば火が通ってしまうのだから、おのずと違ったやり方をすることになるわけだ。



煮込み料理の基本は、汁を煮詰めることにより、煮汁を濃厚な味わいにするところにある。

肉を何時間も煮ていれば、弱火でも、煮汁は自然と煮詰まっていくけれど、魚を煮込むには、それを10分程度の時間のなかでやってしまわなければならないことになる。

だから10分で煮汁が煮詰まるだけの、少なめの煮汁で煮始めないといけないし、少ない煮汁でも、それが煮るものの上にきちんとかぶるよう、落としブタをしないといけない。

また火も強めでなければならないということだ。



つまるところ西洋流と日本流の煮込み料理は、一見ちがったやり方をしているように見えるけれども、結局それは、「材料がちがう」というだけのことなのだ。

「煮込む」ということの内容については、肉でも魚でも、根本はおなじことになる。

それを日本では、魚を短時間で効果的に煮込むために、独自のやり方を発展させてきているというわけだ。

そういう、料理の「からくり」が見えてくると、おもしろくて、俄然やる気になってもくるではないか。






魚の煮付けは、どんな魚を煮込むにも、基本的におなじやり方をすれば良いのだけれど、サバの場合はショウガをきざみ込んで、「生姜煮」にするのが、京都などでは多いようだ。

これが関東なら、「味噌煮」だろう。

どちらもサバの臭いを消すために、強めの味付けにすることになっている。



魚を煮付けるには、今回は片手鍋でやったけれども、もう少し量が多くて、片手鍋には入らないのなら、フライパンでやるのがいい。

フライパンは万能で、焼いたり炒めたりするだけじゃなく、煮たり茹でたりするにも使いやすい。



魚を煮付けるのに、いちばん大事なのは「煮時間」だ。

魚は煮過ぎるとパサパサになってしまうから、適切な煮時間を守る必要がある。

切り身の魚やイワシなどの場合なら、7~8分から、10分も煮れば十分だ。

鯛などのアラなら、10~15分。

脂がたっぷり乗っている、ブリのアラなら20~30分。



その煮時間にあわせて、煮汁の量を決めることとなる。

限られた煮時間で、ぴったり煮詰まる程度の量にしなければいけないというわけだ。

これは鍋の形でもちがってくることにはなるけれど、水と酒の量を合わせて、

「10分で煮詰まるのは1カップ」

と覚えておいて、ほぼ間違いない。

10分煮るなら1カップ、15分煮るなら1.5カップということだ。

煮汁の分量は、魚の分量には関係ない。

純粋に煮時間だけから決めればいい。

水と酒の割合は、半々くらい。

酒をケチらないのがポイントだ。



鍋に昆布をしき、サバは10分ほど煮るから、水と酒は合わせて1カップ。

これを火にかけ、まず砂糖とみりんを入れる。

砂糖とみりんは、たくさん入れればコッテリするし、少しだけ入れればあっさりする。

これはまったくお好み次第だけれども、砂糖は大さじ3程度、みりんは4分の1カップくらいが標準的だろう。

これに味を見ながら、塩辛さがちょうど良くなるまでしょうゆを入れる。

だいたい4分の1カップくらいになるはずだ。

あとは細くきざんだショウガを、たっぷりと入れる。



サバの半身を買う場合、サバは3枚でなく、2枚におろされるから、骨の付いてるのと、付いていないのとがある。

骨が付いてるものの方が、だしが出るから、煮付けるにはうまい。

水でよく洗い、骨のあたりに付いている血のかたまりなどがあれば、臭みのもとになるから、ていねいに取り去っておく。

半分にでも切って、皮が縮むから、皮に切れ込みを入れておくようにする。




沸いた煮汁に魚を入れる。

魚の上下は、盛り付けるときとおなじ方向で入れるようにする。




アルミホイルかペーパータオルで作った落としブタをする。

真ん中に穴をあけておくと、蒸気が抜けて、浮き上がりにくくなる。

火加減は、「強めの中火」。

煮汁がきちんと沸き立って、魚の上にかぶる状態をたもちながら、フタはせず、7~8分煮る。



7~8分煮たら、落としブタを外し、煮汁の量を確認して、まだたくさん残っているようなら、火を強めて煮詰めるようにしても良い。

落としブタを外す場合は、魚の上側が乾くから、スプーンで煮汁をすくい、上からかけてやるようにする。

煮時間が来たら、もしまだ煮汁が煮詰まり切っていなかったとしても、魚はとり出すようにする。

あとは煮汁だけ、好きな加減に煮詰める。



煮付けで一番むずかしいのは、魚を鍋から皿に移すときだ。

煮上がった魚はやわらかくて崩れやすいし、皮もはがれやすいから、フライ返しなどを使って慎重にやる必要がある。

煮魚に青ねぎをかけるのは、広島で僕がしょっちゅう通っていた食堂の流儀。

ホクホクの煮魚に、煮汁をつけながら食べるのが、最高であるのはいうまでもない。



あとはシジミの赤だし。

鍋に砂出ししたシジミと昆布を入れ、水を張って火にかける。

アクを取りながら煮て、シジミが全部ひらいたら、赤だし味噌をとき入れて出来あがり。

もちろん味噌は、ふつうの味噌でも問題ない。



おととい飲み過ぎ、昨日は昼にもビールを飲んだから、さすがに夜は、飲み過ぎることもなく早めに終了。



朝は、シジミの味噌汁でうどんを煮て、菜の花を入れた。






今日は、東日本大震災からちょうど1年。

改めて、亡くなった方々のご冥福をお祈りいたします。

またこの1年間、大変な思いをしながらも、頑張ってこられた被災者の皆さんに、心よりお見舞いを申し上げます。

僕自身、被災者の皆さんのために、できることは少ないのですが、被災者の皆さんとともに歩む気持ちだけは、持ちつづけていたいと思っています。