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2012-04-06

思い知る黒酢の力。
「家常豆腐」



「食欲」は人間の中心的な欲求だけあって、料理には本当に、さまざまな楽しみが含まれているわけですけど、中でも大きいのは、

「文化を愛でる楽しみ」

でしょう。

料理には何十万年という歴史があり、そこで莫大な数の人たちが、「すこしでもおいしい料理を作りたい」とありとあらゆる工夫を重ねてきた。

その集大成が、現在の料理であり、そこには人間の叡智が詰まっているわけなのですよね。

しかも人間は日に3度、何かを食べなければ生きていけないわけだから、料理に無関係でいられる人は1人もいない。

現在のすべての人間、およびこれまで生を享けてきたすべての人間が関わることにより、料理は形作られ、また日々新たなものが生み出されている。

人間はほかにも、音楽や芸術、科学や宗教、政治や経済、テクノロジーなど、多くの文化を生み出してきているけれども、じつは料理は、その歴史の長さと、蓄積される内容の豊富さという意味で、「最大の文化」であるともいえるのじゃないかと思うんですよね。

日々の食事を作ることで、誰でもが、その巨大文化の一端に触れることができる。

それがおもしろく、楽しいものでないわけがないということなんですね。



このごろウー・ウェン「大好きな炒めもの」を見ながら、紹介されている料理をいくつか作ってみたりしているわけですけど、やはり中国の料理文化は、奥が深いですよね。

「炒めもの」というと簡単な料理の代表みたいに思われているところもあり、初心者が入門するのにふさわしい敷居の低さがありながらも、じつはその先に、いくらでも進むことができる。

もちろんどんな料理でも、奥が深いものですけれども、中国の料理は、「次元がちがう」とすら、いえるのではないでしょうか。

その中心が、「油」なのだと思うんですよね。



歴史的に考えると、料理はまず「焼く」と「発酵」とからスタートしたでしょう。

まだ道具を何ももたない、大昔の人たちでも、火があれば何でも焼けたし、条件さえととのえれば、材料を置いておけば発酵した。

次に1万~2万年ほど前に、「土器」が発明され、「煮る」ことができるようになった。

ここで初めて、「スープ」が登場するわけですよね。

日本の場合は、料理の「形式」としての発展は、どういう理由かここで止まってしまうわけですが、その他の多くの国では、「鉄器」の開発により、「炒める」ことが行われるようになっていく。

ここで、「油と食材との相互作用」が、徹底的に研究されるようになったわけなんですよね。



水とおなじように、油も食材の味を溶かし、それを他の食材に移していく作用があるから、油をうまく活用することで、水だけではできなかった、さらに豊富な味付けの方法が編み出されるようになっていく。

とくに「スパイス」の味は、熱した油に溶かすことで、初めて活きることが見つけられもしたのでしょう。

この「油の使い方」について、あらゆる可能性を追求したのが、中国料理だったのだと思うんですよね。

「水と油」の両方から味が付けられていくから、水だけに頼る日本料理などとくらべると段ちがいの、複雑な味わいを作り出すことができる。



家でチマチマ炒めものを作りながら、そんな中国の料理文化の一端を垣間見ることは、つまらないものではありません。

「ほー」などと感心することも、少なからずあるんですよ。



* * * * *



昨日作ってみたのは、やはり「大好きな炒めもの」から「家常豆腐」。

これは「ジャーチャンドウフ」と読むそうです。

豆腐に野菜だけで作る、中国では代表的な家庭料理なのだとのこと。

これにウー・ウェン先生は、日本に来てから「三つ葉が合うことを見つけた」のだそうで、レシピにも三つ葉が使われています。



木綿豆腐をまるまる1丁買ってきて、皿でもまな板でも、キッチンペーパーでもしいて、まず縦半分に切り、さらに横に4等分した豆腐をおき、水切りしておきます。

べつに押したりしなくても、ただ20分くらいでも置いておけば、水が切れます。



豆腐の水が切れたら、片栗粉を表裏にまぶします。

これは表と裏だけで、横には付ける必要はありません。



サラダ油大さじ3をフライパンにいれ、中火で熱して、豆腐を表裏、こんがりと焼きます。

これはけっこう時間がかかります。

ときどきフライパンをゆすって、豆腐が焦げ付かないようにしながら、下面をのぞいてみて焼き色がついたら、菜箸で1つ1つひっくり返します。

サラダ油大さじ3は、けっこうな量ですが、焼いているうちに豆腐に吸われて、全部なくなります。



ここで味付けをするんですが、ウー・ウェン先生のレシピには、「黒酢」が使われます。

あまり新しい調味料を買うのは、置く場所もないし、好きではないんですが、ウー・ウェン先生のレシピにはよく黒酢が登場するので、買ってみました。

ふつうの白い純米酢とくらべると、倍くらいの値段がします。

舐めてみると、酸っぱいというよりも、濃厚な「コク」があります。



ウー・ウェン先生のレシピでは、5ミリ厚さにうす切りしたタケノコ2分の1を炒め、それから調味料を加えることになっています。

でもタケノコは、出盛りになったら京都産のを買うつもりにしているので、今回はシメジを、調味料を入れてから加えました。

調味料は、まず酒大さじ2、醤油大さじ2、黒酢大さじ1、それに水カップ2分の1、これをこの順番でいれていきます。



ウー・ウェン先生のレシピでは、「弱火で4~5分煮て汁を煮詰める」となっていますが、この煮汁の量では、弱火で4~5分では汁は煮詰まりません。

中火のままでいいんじゃないかと思います。

煮汁から豆腐が顔を出すので、煮汁をスプーンですくって、豆腐にかけるようにしてやると、豆腐により味がしみるかもしれません。



最後に「3センチ長さに切った三つ葉1把」をくわえ、豆腐をくずさないようにしながら、全体を大きく混ぜれば出来あがり。

やさしく鍋返ししてやるといいかと思います。



これは、非常においしかったです。

焼けて水気が完全に抜けた豆腐に、たっぷりとしみ込んだ煮汁がたまりません。

調味料を見て分かる通り、「うま味」のもとが、豆腐の焦げた風味と、それから黒酢だけなんですね。

ところがこれが十分。まったく不足はありませんでした。

黒酢の力を思い知った次第です。



三つ葉もたしかに、あっさりした味付けによく合います。

シメジも悪くありませんでした。



あとは山芋のとろろとスグキ、焼酎お湯割り。

昨日は家常豆腐で頭がいっぱいだったせいか、汁物を作るのを忘れました。



朝めしは、ソーセージの粥。

研いだ米100ccを水500ccくらいに30分浸しておき、酒カップ4分の1くらい、それに小口切りにしたソーセージ2本と繊維に直角に細切りにした玉ねぎ2分の1個をいれて、中火にかけます。

煮立ったら火を弱火にし、塩で味付けして、そのまま15分ほど、フタを半分にずらしてかけ、コトコト煮ます。

汁と米の割合が好きな加減になったら火を止めて、器に盛り、コショウを1ふりして食べます。



これは手軽にできますが、おいしいですよ。

ウィンナーは、やはり「シャウエッセン」「アルトバイエルン」級の、すこし高めのやつを使うとおいしいです。



昨日は近所で、早咲きの桜が満開でした。